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喜んでいただく、とはどういうことなのだろう?

こんにちは! 「茄子のはな」のホームページをごらんいただき、ありがとうございます。
「茄子のはな」のスタッフは皆明るく、 人を喜ばせることが大好きな面々揃いなんです。 明るすぎて、数少ない男性スタッフの私などは時々圧倒されて しまいますが…(笑)。そのような先輩方を見習って 奮闘の毎日です。

「茄子のはな」には接客マニュアルがありません。
基本的な礼儀作法は習いますが、お客様とのコミュニケーションは スタッフ個人個人の力量にかかっています。

私は学生時代にサービス業のアルバイトをしていた訳ではなかったので 「お客様自身を見ていない」「サービスが機械的になっている」等 先輩やマネージャーから注意されても、言葉の意図がしっかりとは把握 できず、何をどう直せばいいのか分からないことが多かったです。 気持ちだけが先走ってしまうことも……時折ありました。

どうして、お客様を喜ばせられないんだろう?

そのように空回りして自分に自信がなかった時に、 結婚20周年を迎えたあるご夫婦がご宿泊されたんです。

お話をしているうちに、お二人には大学生・高校生・小学生のお子様が いらっしゃることが分かりました。 子供三人、それぞれ思春期の頃はなかなか親子のコミュニケーションが うまく取れず、奥様は苦労したとおっしゃっていました。

多くは語らなかったのですが当時を思い出して、困ったように ほほえむ奥様を見ていたら、私も自分自身のことを思い出してしまいました。

あの時と同じ、「母」のほほえみ

私は中学生の時、陸上部で部活ざんまいでした。
とにかく仲間と一緒に笑ったり、0.01秒でも記録を伸ばして、より速く、 より前へ進むということに夢中だったのです。

高校に入ってもずっとこうして自分と戦いながら、仲間と笑いながら 走りたい。

子供じみた思いに聞こえるかもしれませんね。
でも、その思いこそが当時の私にとって具体的で一番強い願いだったんです。

その願いを実現するには県内でトップの陸上の強豪校へ進学することでしたが、 私の当時の成績では進学が難しいと言われました。 それでも、陸上に思い切り没頭できるその高校に行きたい!

部活を引退してから私は猛勉強を始めました。
これまでは試験前でも一時間も勉強机の前に座っていられなかった私が 毎日塾と家の往復、帰宅後も勉強……。

部活ざんまいだった頃とは正反対の受験勉強生活中は、ささいなことで イライラしてしまったものです。 体を動かしたいけれども、その間に英単語をいくつ覚えられるかもしれない。 そう考えると、走りたい気持ちを抑えて参考書を開くしかない……。 心配してくれている母にも素直になれず、つい反発することが多かったのです。

それでも母は、常に私の体のことを気遣っていました。

その時の母の控えめなほほえみと、今目の前にいる奥様のほほえみが なぜか重なって見えてしまいました。

改めて言うと照れくさいけれど、今日は伝えたい

こちらのご夫婦は最近までは子育てに追われており、お二人ででかけるということが ほどんどなかったようで、今回のご旅行はとても楽しみにしてくださったそうです。

そのような大切な記念日に「茄子のはな」で過ごすことを 選んでいただいたのであれば、最高の思い出にしていただきたい! 私はお二人にとっての最高のお祝いのカタチについて考え始めました。

そうだ、自宅にいるお子様からお二人の結婚記念をお祝いしていただこう!

そこでお二人には内緒で、ご自宅へお電話させていただきました。 お電話でご自宅にいらした高校生の娘さんにお願いの趣旨を申し上げましたが 恥ずかしがられてしまいました。

無理もありません。
私も高校受験当時の頃は、日頃感謝していても、その想いを伝えることは 照れくさくてできませんでしたから。

身近な家族への感謝の気持ちはとても自然なことです。
でも、その気持ちをあえて口に出すとなると、なんだかとても 大きな仕事に取り組む時のように構えてしまいませんか?

おそらく娘さんも同じことを考えているのだと思います。

それでもせっかくのご両親の20周年記念、ご両親には喜んで いただきたい。

その想いから、私は娘さんにご両親が本日私に自分のお子様たち のことを大切そうにお話してくださったことや、私がお話をして いて感じたご両親の思いやりにあふれるお人柄についてつっかえ つっかえでしたが、熱をこめてお話ししました。

すると、熱意が伝わったのだと思います。 娘さんが了解してくださり、普段では面と向かっていえない感謝の気持ちを 書いていただけました。

娘さんのFAXは、ご両親への感謝の気持ちと思いやりにあふれ、 読んでいてとても温かい気持ちになる文章でした。

涙がこぼれたその理由……

娘さんからFAXをいただいたら、早いもので夕食の時刻でした。
ついにお祝いの本番です。

夕食時にまず私たちサービススタッフからお祝いをさせていただき、 その後に、もう一つ紹介したいことがありますと言い、娘さんから いただいたFAXをゆっくりと読み上げました。

思いもよらなかった展開に、お二人とも驚かれた表情。
しかし驚かれたままで、笑顔に変わる気配がありません。

もしかすると驚きではなく、戸惑い、不快に思われているのだろうか?
勝手にご自宅に電話をして、お怒りになられたのだろうか?
出過ぎた行い、と思われただろうか……?

文字を読みながら、不安な気持ちで胸がいっぱいになっていました。

そのまま文面を読み続け、最後に、お子様のお名前を読んだ時

奥様が涙をこぼされたのです!

旦那様も、その日一番の笑みを顔に浮かべ、 私にお礼を言ってくださいました。

「こんなことしてくれる宿は、初めてだったからさっきは驚いたけど、とても嬉しいです」

自分の母親に近い年齢の女性の涙を、私はめったに見たことがありませんでした。
高価な贈り物をした訳ではありません。 私がふと思いついた、何気ないアイディアです。
それでもたわいもないおもてなしに、奥様は涙を流して喜んでくださったのです。

私は、母に反発する生活が半年続きましたが、勉強の末、第一志望校に 合格しました。
一番に母に合格したことを伝えた時、母は安堵した表情になりました。

嬉しかったです。

今まで心配かけていたのは自分でも分かっていましたから……。

そこで私は素直な気持ちを口に出しました。

『今まで心配かけてごめん。ありがとう』

合格の知らせを聞いた時は安心した表情だった母が、なんと この一言で喜びと安堵から涙をこぼしたのです!
母は今まで口には出さなかったけれども、こんなにも心配させていたんだ…。

奥様の涙を見ていたら、母の涙を思い出しました。 そうか、こういうことなんだ……。

最高のお祝いのカタチは何ですか?

今まで、特別な演出でお客様を感動させようという気持ちが先行して お客様1人1人が何に感動するのか、という大切なことを見落としがちだった のだと思います。

お客様の感動のカタチは一つではない。
何気ないおもてなしが、人の心を振るわせることもあるんだ。
そして、何気ないアイティアが、目の前の奥様をこんなに感動させているのです。

おもてなしの力ってすごい!

私まで感動してしまいました。

この1件以来、 お客様の心の琴線を震わせるおもてなしをしたい という想いが以前より強くなりましたね。

まだまだ勉強することはたくさんありますが、 多くのお客様とお会いできることを楽しみにしています!